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いつか芽吹く日



―いつか喉元に届き得ると知ってなお、生かしておいたのは何故なのですか。
察しの良い補佐役が、白皙の面を曇らせて言った。脳裏にふと、あどけない二つの表情が浮かんだ。生きたい、と叫んだ二つの魂。小さな体を震わせて。
―蒔いた種がどのような花を咲かすかは、見てみないことにはわからぬよ。

「花は咲きましたか、師叔」
 彼は呼びかけにも応じず、こちらに背を向けたままだ。失われた右腕のシルエットが、彼の存在を歪に見せていた。
「…あなたが選んだことでしょう。こうなることも全部分かっていて、それでもあなたはあなたの道を選んだ」
 出会うべきではなかったのだ。その出会いが避けられないものだったとしたら、せめて情をかけるべきではなかったのだ。そう言いかけて、詮無いことだ、と楊ゼンは押し黙った。
「ああ、花は咲かなかった」
 自虐するでも、悲しむでもない複雑な感情を乗せて、彼の言葉は細く響いた。
―花開く前に、ぼろぼろに枯れ腐って消えてしまった、とても美しい二輪の花。

「己の手で摘み取ったはずなのに、すでに色が思い出せぬ」

 ああ、この人は泣いている、楊ゼンはそう悟って彼から離れた。
 いつか芽吹く日が来るといい。流れなかった涙も、地面を染めた多くの血も。そのすべてを吸い蓄えて、いつかは花が咲くといい。
 そしたら僕は花を摘んで、美しいでしょうと見せに行くのだ。
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